「歳入庁」構想 ふわふわと急浮上するも着地点なし 年金機構との統合意味も見い出せず
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:03/09/2012  提供元:エヌピー通信社



 税と社会保険料を一体的に徴収する「歳入庁」構想がにわかに注目を集め始めた。

 岡田克也副総理が政府内に検討チームを設置し、4月中に中間報告を公表する方針を示したほか、民主党内でも専門の作業部会がスタートした。橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」も政策集「維新八策」に歳入庁構想を盛り込む方針、与野党を超えた動きが広がっている。

 民主党は2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で、社会保険庁を解体し、国税庁と統合する「歳入庁」創設を明記。昨年の「社会保障と税の一体改革」議論でも民主党内の一部が「公約実現」を強く求め、素案段階に「ただちに本格的な作業に着手する」と明記させた経緯がある。

 政府・民主党内の検討着手はこの素案を踏まえた動きだが、本気度は極めて薄い。実際、岡田副総理は「歳入庁を設けるかどうかも検討課題だ」と弱腰で、古川元久国家戦略相は「給付付き税額控除や総合合算制度などの仕組みは歳入庁がなくても機能する」と述べ、歳入庁がなくても一体改革に支障はないと予防線を張り始めた。

 政府の身が入らない背景には、歳入庁の創設に向けたハードルがあまりに高く「どうせ実現できない」との見方が大勢を占めている点がある。

 社会保険庁の徴収部門は日本年金機構として既に分離済み。歳入庁を政府部内に置くには、機構職員を再び公務員に戻す必要が出てくる。統合対象とされる国税庁内には「徴収力で劣る年金機構の職員に、国税と同水準の業務を任せられるのか」という機構不信も根強い。

 無理に統合を強行すれば、政府の根幹を成す徴収部門が大混乱する恐れもある。

 「メリットより、デメリットの方がはるかに大きい」。政府関係者はこう語り、「歳入庁構想は絵に描いた餅だ」と切り捨てた。