緊急経済対策で大型公共事業が復活 国債増発で財政悪化の懸念も
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:01/11/2013  提供元:エヌピー通信社



 安倍政権の最重要課題のデフレ脱却に向けた緊急経済対策が固まった。景気への即効性を重視する内容で、国の財政支出は10兆円規模になり、そのうち約半分の5兆円程度を投じる公共事業が対策の柱だ。民主党政権で削減された公共事業の復活を印象づける。一方、民間活力を引き出すための資金供給や次世代に実用化が期待できる研究開発にも目配りしたのが特徴だ。景気刺激策としての短期的な効果を期待する声もあるが、5兆円規模の国債増発が財政悪化に拍車をかけるとの懸念もある。

 対策の柱は「減災・防災」のための公共事業となる。公共事業を所管する各官庁からは大型の予算要求が目立つ。農林水産省は、農業水利施設の耐震化などに充てる農業農村整備事業に約1600億円を、国土交通省は、老朽化したインフラ点検・補修に活用できる「防災・安全交付金」に1千億円以上を計上する方針。公共事業の一翼を担う地方自治体の財政負担を見る交付金も創設する。市場では公共事業で13年度の国内総生産(GDP)を0.5~0.6ポイント引き上げるとの見方が出ている。

 ただ、一方で大型の財政出動の財政への影響は未知数だ。民主党政権は、新規国債発行額を約44兆円以下に抑える財政運営ルールを定めており、12年度当初の国債発行計画は44.2兆円だった。しかし、補正予算で5兆円規模の建設国債を発行するため、年間の国債発行額は50兆円規模に迫る。安倍首相は財政再建よりデフレ脱却に向けて経済成長を優先する方針で、44兆円枠にこだわらず、補正予算を編成するように指示していた。ただ、長期金利に上昇圧力がかかるとみられ、市場では「財政再建に対する考え方を示していく必要がある」と指摘する声もある。