厚労省 公的年金 運用見直し GPIFに前倒し要請
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:06/13/2014  提供元:エヌピー通信社



 厚生労働省が6日、公的年金約130兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に資産運用の見直し作業を前倒しするよう要請した。国内株の買い増しなどが検討される見通し。政府・与党内では成長戦略の一環として「株価の下支え効果」に期待する声が多い。活性化の恩恵にあずかる市場には歓迎する向きがある一方、「株価の上昇は一時的。企業収益が拡大する環境を整えるべき」といぶかしむ声も少なくない。

 同日会見した田村憲久厚生労働相は「運用環境は激変している。なるべく早く見直しに取り組まないといけない」と強調した。

 株式市場では、GPIFの運用見直しで巨額の資金が流れることに期待が高まる。GPIFの資産構成は、国債などの国内債券が2013年末で約55%。国内株式は約17%で20兆円を超える。大和証券の試算では、GPIFが国内株の資産構成割合を20%まで上げると国内株式市場に3.6兆円の資金が流れ込む見通し。共済年金が追随すればさらに4兆円、合計で7.6兆円の買い需要が生まれるという。

 政府が運用比率見直しなどのGPIFの改革を急ぎたい理由について、ある国内エコノミストは「改革の前倒しで株価を上げて(株を持つ個人の資産価値が増えるなどして)個人消費を押し上げ、来年の消費増税に備えようとしている」と指摘する。

 6月中にまとめる成長戦略では、政府内から「大きな目玉がない」と焦る声も聞かれる。昨年の成長戦略は発表間もなく株価が急落。当時の失敗を繰り返さないためにも、株式市場にインパクトを与えるGPIF改革を前面に押し出す格好になっている。ただ、ある市場関係者は「これを成長戦略ととらえるのは間違い。企業収益が拡大する環境を作って株価が上がるのが本来の姿だ」と批判している。