軽減税率 制度設計一向に進まず 公明党に焦りの色
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:08/07/2015  提供元:エヌピー通信社



 生活必需品の消費税を低く抑える軽減税率の制度設計について、財務省の検討作業の進捗状況が芳しくない。消費税を担当する主税局幹部も夏の人事異動で交代し、「新しい担当者が目下、勉強中」(財務省幹部)のため、当面は進展しそうにない状況だ。軽減税率の導入に積極的な公明党は徐々に焦りの色を強めている。

 自民、公明両党による与党税制協議会のもとに設置された軽減税率制度検討委員会は5月、具体的な議論に着手した。しかし、財務省が適用対象について示した3案は「一長一短がある」(麻生太郎財務相)ことが判明し、与党協議が難航。これを受け、自民党の野田毅、公明党の斉藤鉄夫両税制調査会長が6月に会談し、当面の検討委開催を見送ることで合意した。

 野田、斉藤両氏は財務省に対し、制度設計に向けた課題の解決策を練るよう指示した。しかし、7月初めに財務省の定期人事異動があり、消費税担当の星野次彦主税局審議官は国税庁次長、伊藤豊税制2課長は秘書課長にそれぞれ「栄転」。後任の審議官には菅義偉官房長官秘書官から矢野康治氏が、課長には税制3課長から坂本基氏が起用された。

 もともと税収減への懸念から自民党・財務省は軽減税率導入には消極的。野田氏は検討委を中断した際、7月中旬から下旬に再開させる意向を示していたが、人事異動があったこともあり、再開の見通しは立っていない。自民党税調幹部からは「夏の間は再開できそうにない」との声も漏れる。

 検討委は今秋までに制度設計案を取りまとめるとの目標を維持しているが、タイムリミットはじりじりと迫っている。公明党は「次回の会合では一つに絞った案が出てくるはず」(税調幹部)と期待を込めるが、自民党・財務省からは「妙案はない」との意見が支配的。両者の温度差は広がるばかりだ。