B型肝炎訴訟 患者ら43万人に和解金3・2兆円
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:07/01/2011  提供元:エヌピー通信社



 B型肝炎訴訟で原告と国が和解に基本合意した。和解金支払いのため、政府内では所得税などの臨時増税の検討に入るが、東日本大震災からの復興財源でも所得税の増税が検討されており、調整が必要。税と社会保障の一体改革も控え「増税一色」となるだけに、与野党の反発は強く、議論は難航必至だ。

 厚生労働省の推計では、救済対象は肝がんや慢性肝炎などを発症した患者3万3千人と未発症者約40万人。政府は合意に従って、和解金の支払いや検査費の助成などで今後30年間で約3・2兆円の財源が必要だ。今秋にも和解が成立し、和解金の支払いが始まる可能性があるが、当初5年間の必要額は1.1兆円で、政府は、赤字国債の発行ではなく、所得税などの臨時増税で賄いたい考えで、7月以後の税制調査会で増税議論が始まりそうだ。

 ただ、社会保障改革では消費税率10%への引き上げが検討されているほか、10兆円超とされる復財源を巡っては、所得税や法人税を1割引き上げる「定率増税」が検討されている。相次ぐ大幅増税への与野党のアレルギーは強く、消費増税では与野党協議のめどが立っていないほか、民主党の税制改正プロジェクトチームも復興財源に関する議論を当面封印する構えだ。B型肝炎は是正を怠った厚労省の責任も大きいだけに、「納税者負担を求める前に、歳出削減策を示すべきだ」(民主党幹部)などと、安易な増税論議に批判が高まる可能性もありそうだ。