骨太の方針 歳出抑制目標「目安」どまり 妥協の産物に“骨抜き”への懸念も
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:06/26/2015  提供元:エヌピー通信社



 政府は6月末閣議決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に、地方交付税などを除いた政策経費の伸びを2018年度までの3年間で計1・6兆円に抑える歳出抑制の「目安」を盛り込む。景気への悪影響を避けるため歳出減による「痛み」を極限まで避ける財政健全化計画づくりを模索した甘利明経済再生担当相を、歳出の歯止めも必要とする自民党の稲田朋美政調会長や財務省が押し返した結果だ。ただ、双方の妥協の結果、経済・物価動向などを踏まえ柔軟に対応する方針も記され「目安」が骨抜きになる懸念は残された。

 甘利氏と稲田氏は当初「経済再生に悪影響を与えないよう厳しすぎる財政健全化計画はつくらない」との認識を共有。甘利氏が所管する経済財政諮問会議が名目3%以上の高成長による税収自然増を前提とする方針を打ち出すと、稲田氏も追随するなど両者の歩調は一致していた。

 しかし5月、論議が本格化すると認識の違いが表面化。諮問会議が公的部門の民間開放などによるさらなる税収自然増を模索し出すと稲田氏は「雨ごい」に例え批判した。度を超えた成長頼みは計画の信頼性を失わせ、政権の足を引っ張りかねないとの認識からだ。

 稲田氏率いる党財政再建特命委員会は財務省と協力し、安倍政権が最近3年間で政策経費を1.6兆円、社会保障費を1・5兆円の伸びに抑えた実績を今後3年間の目標にそのまま使う案を提案。これには甘利氏が反発、稲田氏が6月16日に首相に提言を提出した際は同席を拒否した。

 6月22日の諮問会議直前まで続いた調整の結果、1.6兆、1.5兆の数字は盛り込む代わりに、目標より幅のある概念の「目安」とすることで双方が妥協した。経済・物価動向を踏まえ、弾力的に対応することも明記。高成長が実現したり、物価が上昇したりすれば目安を超えた歳出増ができる道を残した。

 既に自民党からは骨太素案に入った社会保障改革の具体策について「検討だけして採用しなければ良い」(厚労相経験者)との声が漏れるなど、骨太が〝骨抜き〟になる動きも見られる。