子だくさん世帯に税優遇「N分N乗」議論スタート
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:04/14/2017  提供元:エヌピー通信社



 子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗方式」の導入に向け、自民党の有志議員による研究会がスタートした。有識者ヒアリングなどを重ねて、今秋以降の党税制調査会での所得税改革の議論につなげたい考えだが、共働き世帯よりも片働き世帯の方が有利になるなど財務省側の懸念は根強く、長期的な議論となりそうだ。

 所得税は、所得額が大きいほど税率が高くなる累進課税で、現在は5%から45%までの7段階に分かれている。個人に課税され、共働きでは夫と妻それぞれに課税される。

 これに対してN分N乗方式では、まず課税所得を世帯で合算したものを家族の人数(N)で割り、累進税率を適用。その上で、再びNを掛け合わせて税額を算出する。既に採用されているフランスでは、合計特殊出生率が日本より大幅に高く、N分N乗方式が人口減少に効果があったとする意見もあるという。自民党内からの期待はこの点で、少子化に歯止めを掛ける側面がある。

 ただ、実現に向けての課題は多い。まず、子どもが多い世帯ほど課税所得が細かく分割され、より低い税率が適用されて税額が少なくなる仕組みだ。そのため、高所得世帯に比べ、もともと所得税額が少ない中低所得世帯では分割しても適用税率が変わらず、税負担の軽減効果が得られない。

 また、片働きの夫か妻が高所得の場合、配偶者がパート労働で働いて得る所得にも高い税率が適用されてしまい、就労意欲に抑制効果が働く懸念もあり、財務省の慎重姿勢も強い。

 研究会顧問に就いた細田博之・党総務会長は会合で、「何カ月かで達成できるものではない」と制度設計の難しさを認めた上で、「長期展望を出して(税の)システムをくみ上げるべき」と述べ、将来の制度見直しに意欲を示した。