税制改正大綱を前倒しで公表 復興特別法人税の廃止判断先送り
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:10/04/2013  提供元:エヌピー通信社



 安倍晋三首相の消費税率引き上げ発表に合わせ、自民・公明両党による与党税制改正大綱がまとまった。通常は年末にまとめる税制改正大綱だが、政府の成長戦略に合わせ、投資減税策部分を秋に前倒しして決定した。焦点となっていた「復興特別法人税」を1年前倒しして廃止することについては、「被災地の方々の十分な理解を得ること、および復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること等を踏まえたうえで、12月中に結論を得る」と結論を先送りした。ただ、事実上、前倒し廃止は固まった形だ。

 復興特別法人税は、東日本大震災からの復興費用をまかなうため、2012年度から3年間、法人税額に10%上乗せする制度。この税制を1年前倒しして廃止することで、約9000億円の税収減になる。「前倒し廃止」を主導したのは、企業に近い立場の経済産業省だった。復興特別法人税をなくすことにより、法人税の実効税率の引き下げを早期に実現したい思惑があり、「企業の競争力を高め、社員の給与を増やす」という減税の趣旨に首相官邸も乗った格好だ。

 これに対して、与党は反発。「被災地の皆さんにどうやって説明するのか」(大島理森・自民党東日本大震災復興加速化本部長)など、被災者の感情面への配慮を求める声が多く出された。政府内も一枚岩ではなく、麻生太郎財務相は「人件費や給料のアップにつながる保証が見えず、下げた分が内部留保に回るならば世間の理解は得にくい」と否定的だ。特に公明党の反発は強く、最後まで与党内の調整はもつれたが結局、前倒し廃止の結論を12月中に出すことでまとまった。10月中旬に開会予定の臨時国会だが、「復興増税の前倒し廃止は野党の突っ込みどころ満載だ」(公明党幹部)と、早くも政府の国会運営を危ぶむ声もあがる。