地方法人住民税に国税化案 税収減の東京都は猛反発
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:11/08/2013  提供元:エヌピー通信社



 地方の税収である地方法人住民税の一部国税化が浮上している。地方税収の地域間格差を是正するのが狙いで、総務省地方財政審議会の「地方法人税課税のあり方等に関する検討会」が提言した。しかし、最も税収を“奪われる”ことになる東京都は東京五輪への影響も引き合いに出して猛反発しており、年末の来年度予算編成までし烈な対立が続きそうだ。

 都道府県税の「法人事業税」と、都道府県と市町村が折半する「法人住民税」の「法人2税」は、大企業の本社が集中する東京都の税収が突出。地方税収全体の格差を見てみると、最多の東京都が最少の沖縄県の2.5倍になっている。

 格差是正のため、政府は2008年度、法人事業税の約4割を国税化し、税収の少ない地方に再配分する改革を行った。減収となる東京、大阪、愛知の3都府県知事が反対したが、「税制抜本改革で地域間の偏りの小さい地方税体系が構築されるまで」の時限措置として続いている。

 検討会が抜本改革のあり方として10月30日にまとめた提言では、法人住民税を国税化して地方交付税に繰り入れる。消費増税法では、消費税率8%のうち地方の取り分である「地方消費税」は1.7%分、地方交付税財源は1.4%分あるが、交付税財源から地方消費税に1%分を移し、地方独自財源の割合を増やす案を示した。消費税は地域間格差が1.8倍と比較的小さく、格差是正や地方税収の安定化を期待できる内容だ。

 これに対し、数千億円程度の税収減となる東京都の猪瀬直樹都知事は今月1日の記者会見で、「税の配分を(国が)勝手に決めるのは地方分権と逆行した話。東京オリンピック・パラリンピックの開催準備にも支障が出かねない」と猛反発した。

 しかし総務省は「猪瀬知事は五輪招致の際、大会開催準備基金が十分あると強調していたはず」と反論。財務省も「東京都は、子どもの医療費を中学生まで全額助成するなど行政サービスは他県よりかなり充実しているうえ、国家公務員より1割高い人件費を払い、それでも予算が余っている」とし、地域間格差の是正のためには地方法人住民税の国税化が必要との立場を取っている。