金取法改正案を閣議決定 情報漏洩者にも刑事罰
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:04/26/2013  提供元:エヌピー通信社



インサイダー取引の規制強化へ

 政府は4月16日、インサイダー取引の規制強化のため、企業の未公表の重要情報を漏えいした情報提供者に刑事罰を科すことなどを柱とする金融商品取引法などの改正案を閣議決定した。昨年、企業の公募増資をめぐり、野村証券や大和証券など証券大手が企業情報を漏らした事案が相次いだ。これまでは、情報を得て不正取引をした側しか罰することができず、情報提供のみでは刑事罰の対象外だったが、法改正で証券会社の社員などが未公表の企業の重要情報を外部に漏らし、違反取引がされた場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる。

 AIJ投資顧問による年金消失事件を受けて、資産運用における不正行為への罰則を強化する。運用会社が事実と異なる運用実績を伝えて年金基金と契約を結んだ場合の刑事罰を引き上げる。懲役を現行の3年以下から5年以下に、罰金を300万円以下から500万円以下にそれぞれ引き上げる。

 また、08年秋のリーマン・ショックが世界の金融システムに連鎖的に影響を及ぼしたことを教訓に、銀行だけでなく、証券会社や保険会社にも公的資金を投入できるように預金保険法を改正する。資金は預金保険機構が政府保証で調達するが、損失が生じた場合には、原則として金融機関が事後的に負担する。

 金融業界全体で負担を共有しようという考え方だが、すでに証券業界では「投資者保護基金」、保険業界では「保険契約者保護機構」が整備されている。各社が負担金を拠出して、証券会社や保険会社が破綻しても一定額までは顧客の資産が保護される仕組みだ。金融業界全体で支えるという今回の法改正の意義自体には異論はないものの、一部には新たなコスト負担を懸念する声も挙がる。これらの改正案は、6月26日までの今国会で成立する見通しで、今年度から来年度にかけて施行される。