償却資産への固定資産税は二重課税中小企業の税負担は減るのか?
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:07/08/2016  提供元:エヌピー通信社



 企業の持つ機械装置や電源設備などにかかる固定資産税のあり方について、日本税理士会連合会(神津信一会長)が疑問を投げかけている。神津会長は6月27日、会長の諮問機関である税制審議会(金子宏会長)に対して、年に一度の「諮問」を行った。会長諮問は審議会の答申を踏まえた上で日税連が毎年作成する税制改正建議書に反映される。

 今年の諮問内容は、企業の持つ償却資産への固定資産税のあり方についてだった。固定資産税は、土地や建物以外にも、企業の保有する事業用資産も課税対象となる。その対象となる償却資産は、看板・門・塀などの構築物、電源設備などの建物附属設備、機械装置といったものから、応接セット、工具、レジスターなど幅広い。その税収規模は約1兆6千億円となり、昨年末に決定した2016年度税制改正大綱では、「固定資産税が市町村財政を支える安定した基幹税であることに鑑み、償却資産に対する固定資産税の制度は堅持する」と明記された。

 これに対し、諮問では償却資産への固定資産税をめぐる問題点として、(1)企業の設備投資を阻害すること、(2)製造業など設備投資型の業種に税負担が偏っていること、(3)その資産を使って得られる所得への事業税や住民税との重複課税となること、(4)償却資産に対して固定資産税を課している国はほとんどないこと――どを挙げ、制度の意義を疑問視した。

法人減税で潤うのは黒字企業だけ

 また実務の観点からも、家屋と償却資産の区分が困難であることや、法人税や所得税の減価償却制度との取り扱いの食い違いがあること、決算期に関係なく申告期限が来るため企業に煩雑な事務負担を強いていることなどの問題点を列挙し、「免税点や税率水準のあり方などを含め、総合的に検討してもらいたい」と税制審議会に諮問した。

 安倍政権の推し進める法人税改革では黒字法人の税負担が下がる一方で、いまだ厳しい経営環境にさらされる赤字中小企業にとっては恩恵がない状況が続く。そんなか、税の専門団体である日税連が、どの企業にも等しく負担のかかる固定資産税について問題提起したことが中小企業に良い影響を及ぼすことを期待したい。