証券取引監視委企業への監視体制を強化東芝問題受け「予防性」重視
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:12/11/2015  提供元:エヌピー通信社



 東芝の不適切会計問題を受け、証券取引等監視委員会は、企業に対する開示検査の手法を見直す。不正の疑いに関する事前情報がなくても、マクロ経済動向など経営環境の変化を踏まえて、個別の企業への監視を強めるよう改める。迅速かつ的確な実態把握につなげたい考えだ。

 監視委は12月7日、金融商品取引法違反(有価証券報告書などの虚偽記載)の疑いで、東芝に対する行政処分として、過去最高となる課徴金73億7350万円の納付命令を出すよう金融庁に勧告した。同日、監視委の佐々木清隆事務局長らが記者会見し、金融庁と連携して東芝の企業体質の改善を今後も監視するとともに、開示検査の手法を見直す方針を明らかにした。

 企業の開示書類に重大な虚偽記載があるかどうかを調べる監視委の検査は、これまで内部通報窓口への情報提供などを端緒に実施してきた。東芝への検査も今年2月、監視委に寄せられた内部通報がきっかけだったが、東芝では以前から不適切な会計処理が常態化。当局には「早期に問題を発見し指摘できていれば、ここまで傷口が広がらなかった」との反省がある。

 新たな開示検査では、「先を読んだフォワードルッキングな行政を取り入れる」(佐々木氏)。個別の企業に関する具体的な情報提供などがない場合でも能動的に検査する構えだ。例えば、中国経済の減速で影響を受ける中国進出企業や、原油価格の下落で収益が悪化する商社など、マクロ経済の変動で経営に打撃が及びかねないと判断した業種や企業を想定しているという。

 ただ、不正の兆候に関する十分な根拠がない中で当局が監視を強めれば、企業の自由な経済活動を制約しかねないとの懸念もある。監視委は「経営そのものに関与する趣旨ではない」(佐々木氏)と説明しているが、新たな検査手法の運用には慎重な対応が求められそうだ。