タックスヘイブン課税見直しへ外国子会社への監視強化
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:08/26/2016  提供元:エヌピー通信社



 政府はタックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れを防ぐため、日本企業が海外に置く子会社に対する課税を強化する方針だ。2017年度税制改正に盛り込むことを目指す。国際的な課税逃れを暴露した「パナマ文書」によって多国籍企業や富裕層の過度な節税に批判が高まっていることもあり、対策を急ぐ。

 法人税の実効税率が低い国にある子会社に現地での事業実体がない場合、配当や知的財産などの所得を日本の親会社と合算して日本の法人税率を課す制度「タックスヘイブン対策税制」を見直す。現在はアイルランドやシンガポールなど実効税率が20%未満の国・地域が合算対象だが、基準をなくす。日本の実効税率(29・97%)よりも低い国・地域ならすべて対象にする方針だ。これまで対象外だったオランダや英国、韓国などが加わる。税率の差を利用して海外に設立した子会社に所得を移転するなどの課税逃れに歯止めをかけることを目指す。

 しかし、経済界との本格的な調整はこれからだ。これまで税率の低い国を戦略的に活用してきた企業にとっては子会社の存廃を含めて判断する必要性が生じるほか、子会社での所得に実体があるかどうかの線引きや精査の負担増を懸念する企業もある。企業の対応には時間が必要となるとみられることから、政府は経過措置を数年間設けることも検討する。

 政府内には課税強化による税収増への期待もある。ただ、企業への優遇税制を使えば実効税率が20%未満になるオランダや英国に子会社を置いている企業の中には、既に親会社と合算課税しているケースも多い。課税強化になれば現地から撤退する企業もあると見られ財務省は「公平な税負担が目的。税収増になるかどうかはわからない」とけん制する。