国保料率不明示は租税法律主義違反の判決
カテゴリ:06.地方税 裁決・判例
作成日:06/01/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 被保険者に国民健康保険料を課す算定根拠としての保険料率を市の条例に規定していないのは、租税法律主義に反しており違法、との判決がこのほど旭川地裁で下された。
 事件は旭川市内に居住する被保険者の無職の男性が、保険者である同市市長を相手取って国保料賦課処分の取り消しを求める行政訴訟を提起していたもの。訴えによると、原告は平成5年以降の所得が生活保護基準額以下であることを理由に毎年国保料の減免申請をしていたが、市から非該当とされ、さらに道国保審査会への審査請求も棄却されていた。
 形は取消訴訟だが、争点の一つは国保料の法的性格、判決は国保料について、形式的には租税ではないものの、(1)強制加入であること、(2)保険というより社会保障事業政策の一環であってその対価性は希薄であることなどから租税と同一視できると判断、したがって租税法律主義の適用が及ぶ範囲とした。そのうえで、市条例の規定が保険料算定の基礎となる賦課総額・料率を市が自らの裁量で内部決定できる内容であり、こうした賦課方法は、課税要件を明確に条例で定めるよう求めている憲法や国保法に違反していると結論づけた。
 国民健康保険は、国民皆保険制度のもと市町村が保険者となって自営業者や退職者等が加入する制度だが、その財源調達方法には税形式と料形式とがある。大都市部に多い料採用の自治体では「料率は速やかに告示すること」とする厚生省通達に基づき、つまり条例明記しない運用をしているところが多いとされる。今回の租税法律主義の及ぶ範囲とする判断は、自治体関係者に衝撃を与えるものとなりそうだ。