脅迫は税の減免が認められる事情には当たらないと判示
カテゴリ:06.地方税 裁決・判例
作成日:08/24/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 購入した自動車が喝取され、使用できなかったことを理由に、自動車税の減免申請がされていた事件に対して最高裁(堀籠幸男裁判長)は、脅迫された結果とはいえ、それが税の減免が認められる天災その他特別の事情に当たるということはできないと判示、減免申請を認容した控訴審を破棄するとともに、納税者側の控訴も棄却する判決を言い渡した。

 この事案は、購入した自動車を横領されて占有できず、その所在も不明であることを理由に県税事務所に自動車税の減免申請をしたところ、県税事務所長が地方税の減免規定に該当しないことを理由に却下したため、提訴の上、却下処分の取消しを求めていたもの。

 控訴審の名古屋高裁は、自動車を喝取されて使用できる状況になかったのみならず、その状態を解消するべく民事訴訟を提起するなどできるだけの努力を行ったものの、横領した者が行方不明になり、自動車の所在も不明だったことからその求償を求めることは事実上不可能になったと認定。その上で、求償事実が事実上不可能になった後の自動車税の減免を認めないとする取扱いは不平等であり、県税事務所長の却下処分は裁量権の範囲を逸脱したもので違法であると判示、納税者側の申請を認容する判決を言い渡したため、さらに県税事務所側が控訴審の棄却を求めて上告していたという事案だ。

 上告審は、被上告人(納税者側)が脅迫された結果であるとはいえ、横領者への自動車の貸与を承諾したのであるから、購入した自動車を利用し得ないという損害を被っても、それは納税者側の意思に基づかないことが客観的に明らかな事由によって生じたものではないと指摘。結局、そうした事情は税の減免が認められる「天災その他特別の事情」には当たらないと判示、控訴審を破棄するとともに納税者の控訴を棄却する判決を言い渡した。

(2010.07.06 最高裁第三小法廷判決、平成21年(行ヒ)第52号)