代物弁済による土地の取得は相続による取得ではないと判示
カテゴリ:06.地方税 裁決・判例
作成日:06/28/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 遺留分減殺請求に伴う価額弁償の弁済に代えて取得した土地にも不動産取得税が課税されるか否かの判断が争われた事件で、大分地裁(一志泰裁判長)は、不動産取得税の課税対象になる不動産取得とは所有権移転の形式による不動産取得のすべての場合を含むと解するのが相当と指摘して、賦課決定処分の取消請求を棄却した。

 この事件は、原告の養親の相続によって原告の養子夫婦(妻は原告の長女)が養親の所有していた不動産の遺贈を受けたことがそもそもの発端。そこで原告は養子夫婦に遺留分減殺請求を行使して訴訟を提起したところ、原告と養子夫婦との間で、減殺請求に係る価額弁償として養子所有の土地を代物弁済するなどの和解が成立、土地を取得した。しかしこの土地の取得に対して、県税事務所長が不動産取得税の賦課決定処分をしてきたため、原告がその取消しを求めて訴訟を起こしていたという事案である。

 原告は、価額弁償不動産の代物弁済によって取得したものでも、実体は相続であるから相続による不動産の取得に当たり、地方税法73条の7第1号の規定から非課税になると主張してその取消しを求めていた。つまり、価額弁償という形の、いわば第二の遺産分割協議がなされたものであるから、非課税になると主張していたわけだ。

 これに対して判決は、遺留分減殺請求に係る価額弁償として代物弁済という所有権移転の形式によって土地を取得したのであるから、地方税法73条の2が定める土地の取得に当たると認定。その結果、代物弁済の合意によって土地所有権の主体を実質的に変更するものであり、非課税とされる所有権主体の実質的な変更を伴わない形式的な所有権の移転とはいえないから、不動産取得税が非課税となる相続による不動産の取得にはあたらないと判断して、納税者側の主張を斥けている。

(2011.01.17 東京高裁判決、平成21年(行ウ)第15号)