翌期支給予定の未払使用人賞与の損金算入を否定、棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/06/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 翌期初めに支給予定の使用人賞与を損金に算入したことの可否が争われた事件で東京地裁(小林宏司裁判長)は、具体的な支給額が職員に通知されていなかったことから前事業年度末時点で支給額が確定していたとは言い難いと指摘、法人側の訴えを退けた。

 この事件は、へき地等の医療を支援する病院等の開設及び運営管理の受託等を行うことを目的に旧民法34条法人として設立された後、新公益法人法の施行に伴い、社団法人から公益社団法人へ移行した法人が訴えたもので、公益法人に移行後の最初の申告の際に、翌期始めに支給予定の賞与等を損金に算入して申告したのが発端。

 これに対して原処分庁が損金算入を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴した事案である。法人側は給与規定等に従った金額の賞与が支給されることを職員が了知し、支給額を自ら計算することも可能なのであるから、事業年度末時点において支給額を通知していたといえると主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 しかし判決は、使用人賞与等の損金算入時期を定めた法人税法施行令72条の5が原則、実際に支払いがされた日の事業年度における損金算入を認めているが、未払賞与の場合は、債務が確定していることが判断できる状態にあるものに限って例外的に損金算入を認めていると指摘して、支給額の通知は、個々の使用人ごとの具体的な賞与の支給額を最終的・確定的に決定し、これを使用人に表示することが求められるという解釈を示した。

 そのため、単に給与規定や内規等による所定の計算式が存在することを知っているだけでは、賞与の具体的支給額を知ることができたとはいえないと判断した。というのも、病院の業績等によっては賞与の支給割合が変更される余地が残されているという判断もできるからだ。そうした判断から、結局、原処分は適法と判示して法人の訴えを棄却している。

(2015.01.22東京地裁判決、平成25年(行ウ)第181号)