入居一時金は返還不要が確定した額、時期ごとに益金算入
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/01/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 財団である有料老人ホームが入居者から入居契約等の更新時に受領する入居一時金の計上時期の判断が争われた事件で東京高裁(大竹たかし裁判長)は、原審どおり、返還しないことが確定した部分ごとに、その返還しないことが確定した事業年度の益金に算入すべきと判示して、有料老人ホーム側の控訴を棄却した。

 この事件は、入居者から入居又は入居契約の更新に際して受領する入居一時金の収益計上時期に誤りがあると原処分庁が指摘、所得の金額が過少、また欠損金額が過大に申告されていると判断して法人税の更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしてきたため、老人ホームがその取消しを求めて提訴したものの、原審の東京地裁が棄却したため、控訴して再度その取消しを求めていたという事案。

 つまり原審は、入居一時金は、役務を終身にわたって受け得る地位に対応する対価であると認定した上で、いわば賃貸借契約における返還を要しない保証金等に類すると指摘、その収入の原因となる権利は期間の経過によって返還を要しないことが確定した額ごとに、返還を要しないことが確定した時に実現すると判断して、老人ホーム側の請求を棄却したわけだ。

 というのも、終身入居契約に係る入居一時金は、終身にわたって入居者に施設を利用させ、介護を提供する等の役務対価の機能を有する一方、役務提供期間は入居者の死亡、解約の申出等不確定な事情によって定まり、これらの事情によって入居契約が中途終了し、役務提供の義務が将来に向かって消滅した場合でも、短期解約返済条項の適用があるときを除けば、中途終了返済条項が定める額以外は返済を要しない点に特徴があるという考えからだ。

 結局、控訴審も控訴人の税務処理が大多数の有料老人ホームで行われている一般的な税務上の会計処理であると認めるに足る証拠はないと判示して、控訴を棄却している。

(2011.03.30東京高裁判決、平成22年(行コ)第192号)