解散見込み会社の増資払込みは不自然・不合理と裁決
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:07/27/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 解散が見込まれる関連会社への増資払込みに同族会社の行為計算否認規定を行使したことの適否が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は純経済人として不自然・不合理な行為と指摘して法人税を不当に減少させるものであると判断、審査請求を却下した。

 この事案は、請求人が債務超過状態にある関連会社の増資引受による払込金を投資有価証券勘定に計上後、清算結了時に、投資有価証券勘定への計上額を投資損失として損金に算入して申告したところ、原処分庁が払込金は子会社等の整理・再建の場合の損失負担等に該当せず、寄附金に該当すると認定して更正処分等をしてきたため、その全部取消しを求めたもの。つまり、増資払込金は追加損失や信用失墜を最小限に食い止めるためにしたもので、寄附金には該当しないと主張して原処分の全部取消しを求めていたわけだ。

 しかし裁決は、関連会社が解散に向けた事務処理を行っている過程で、特段の事情もなく第三者割当の有償増資に応じていること、また関連会社とは資本関係や資金融通関係も無く取引も少額であり、請求人が増資を引き受けなければならない必要性にも乏しいと認定。その結果、関連会社への増資払込金は、純経済人の行為として不合理・不自然であり、それを投資損失として処理した上で清算配当金との差額を損金に算入して申告を行って法人税を不当に減少させていると指摘。結局、同族会社の行為計算否認規定(法法132)の適用は相当であるから、その金額については損金算入が認められないと判断した。

 なお、更正の対象となった一期分については納付法人税額が更正処分の額に満たなかったため、結果的には一部取消しという裁決になった。

(国税不服審判所、2009.09.16裁決)