業務委託料は貸付金ではなく寄附金と認定、一部取り消し
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/26/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 グループ法人間の業務委託契約に基づいて支払った業務委託料の損金算入の可否が争われた事件で国税不服審判所は、役務提供の事実が認められないとともに、業務委託先の法人に対する貸付債権と相殺されていることなどから、経済的利益の無償供与ではあっても貸付金には該当しないと判断、貸付金として利息計上すべき部分のみを取り消した。

 この事件は、建設コンサルタント業を営む法人(審査請求人)がグループ法人に支払った営業・業務委託料を損金に算入して申告したところ、原処分庁が業務委託料を法人の会長が実質的に支配する子会社への貸付金等であると認定して損金算入を否認、法人税の更正処分等を行ったのが発端となった。

 そこで法人側が業務委託には実体があると主張して、原処分庁側の事実誤認を理由に課税処分等の取消しを求めて審査請求したわけだ。そのため原処分庁側は、業務委託契約は実体のない架空の契約であり、各委託料は請求人の会長が実質的に支配するグループ法人への貸付金等に当たることを理由に、貸付けに係る利息相当額は益金に算入すべきであると主張して、審査請求の棄却を求めたという事案である。

 これに対して裁決は、各委託料が1)役務提供の有無にかかわらずに支払われており対価性がないこと、また2)貸付債権と相殺されている実状を考慮して、委託料は請求人がグループ法人に債務消滅という経済的利益を無償供与したものであり、法人税法37条(寄附金の損金不算入)7項の寄附金に該当すると認定。つまり、建設コンサルタント業を営む請求人の主張にも理由がなく、各委託料を貸付金に当たると認定して利息相当額を益金算入すべきとした原処分庁側の主張にも理由がないと判断したわけだ。結局、業務委託料はグループ法人への資金援助を仮装したものであると認定、課税処分の一部を取り消すに止まった。

(国税不服審判所、2001.08.23裁決)