前代表者に支払った各金員を給与等と認定して原処分を取消し
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:12/11/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 前代表取締役に支給した各金員が給与等に該当するか、交際費等に該当するかの判定が争われた事件で、国税不服審判所は前代表取締役には勤務の実態があったことなどを認定して交際費等には当たらないと判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、法人である審査請求人が前代表取締役に対して支給した給与等について、原処分庁が前代表取締役には勤務実態がないことから地元対策等に対する謝礼であり、交際費等に該当するとして法人税の更正処分等を行ってきたため、法人側が原処分の全部又は一部の取消しを求めて審査請求した事案である。

 原処分庁側は、請求人の前代表取締役に支給された給与等について、前代表取締役が請求人である法人に対して人的役務の提供を行っておらず、地元対策等を目的とした前代表取締役の影響力に対する謝礼であるから交際費等に該当する旨主張して、審査請求の棄却を求めた。つまり、租税特別措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するか否かに争点があったわけだ。

 これに対して裁決は、前代表取締役は、取締役を退任する際に現在の代表者から、請求人と事業所周辺の住民との協調関係を維持すること、同業者及び取引先との調整等に協力すること、及び請求人の従業員から相談を受けることや指導をすることなどの業務の依頼を受けており、代表取締役を退任した後も請求人の事務所に毎日出勤してこれらの業務を行っていたという事実を認定した。

 そうした事実認定から、請求人と前代表取締役との間には雇用契約又はこれに類する合意が成立していると認められ、前代表取締役は、請求人の事務所等において、請求人の指揮命令に服して継続的又は断続的に労務の提供を行っていたとも認定。結局、前代表取締役に支払われた各金額は、労務の対価として支給した給与等に該当し、謝礼金(交際費等)には該当しないと判断して原処分を取り消している。

(国税不服審判所、2012.03.06裁決)