企業グループ内の組織再編成は租税回避に当たると判示して棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:05/13/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 企業グループ内の組織再編成(合併)を通じて、被合併法人の未処理欠損金額を損金算入して申告した行為が租税回避に当たるか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(谷口豊裁判長)は特定役員引継要件を形式的に満たしているだけで適格合併等としての性格が極めて希薄であり、法人税の負担を不当に減少させたものと判示、法人側の主張を棄却した。

 この事件は、インターネット関連事業を行う法人が子会社の全発行済株式を譲り受けて吸収合併した後、申告の際に被合併法人の未処理欠損金額(約542億円)を損金に算入して申告したのが発端となった。

 この申告に対して原処分庁が、合併法人側の一連の行為は適格合併の要件を形式的に満たしただけの、租税回避を目的にした異常かつ変則的なもので法人税の負担を不当に減少させるのが狙いと認定、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)を適用して否認、更正処分等をしてきたため、合併法人側がその取消しを求めて提訴したという事案である。つまり、適格合併の要件の充足性、組織再編成に係る行為計算否認規定と同族会社の行為計算否認規定が同趣旨のものか等が争点になった事案である。

 判決は、組織再編税制の概要を整理した上で、組織再編成に係る行為・計算の包括規定が設けられた趣旨を解釈。まず、共同で事業を営むための適格合併要件の一つである特定役員引継要件に触れ、形式的には要件を充足しているものの、役員の去就という観点から、合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続している状況があるとはいえず、立法趣旨に反する状態になっているのが明らかと断じた。

 また、組織再編成に係る行為又は計算の規定に基づく否認は、更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限らず、更正又は決定を受ける法人以外の法人であって、同規定の各号に掲げられた行為又は計算が含まれるという解釈を示した。

 結局、特定役員引継要件を満たすための役員就任は原告側法人の行為であり、これを容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果になると判示して棄却した。その結果、法人側は判決内容を不服として控訴した。

(東京地裁平成26年3月18日判決、平成23年(行ウ)第228号)