経済的な利益の享受はあるものの、贈与の事実はないと裁決
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:07/30/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 法人名義で取得した車両を実質経営者の妻が専属的に使用していたことをめぐって、実質経営者に対する車両の取得費等の贈与の有無、さらに隠ぺい又は仮装による役員給与に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は代表者への贈与の事実はなく、給与支給と同様には認められないと判断、原処分を一部取り消した。
 
 この事件は、飲食店を経営する法人が車両を取得、実質経営者の妻がその車両を個人使用していたことから、原処分庁が車両の購入対価等を実質代表者への役員給与と認定、法人税及び消費税等の各更正処分等をしてきたため、法人側がその取消しを求めて審査請求したもの。
 
 つまり原処分庁側は、法人名義で取得した車両の取得費等を実質経営者の指示に基づいて費用に計上していること、実質経営者の妻は役員又は従業員ではないこと、実質経営者が100%株主であることなどを踏まえれば、車両の取得費等は実質経営者への役員給与に該当し、個人使用目的で取得した車両の取得費等を法人の費用に計上したことは隠ぺい又は仮装による役員給与に当たると判断して否認してきたわけだ。
 
 これに対して裁決は、法人が車両購入の当事者であり、信販会社を通じて売買代金を支払い、車検証にも法人名が記載されている事実関係等から、車両の所有者は法人と認めるのが相当と認定。そのため、実質経営者へ車両の贈与があった等、法人が一定の行為をしたことにより実質的に給与を支給したものと同様の経済的効果をもたらしたとまでは認めることができず、仮装・隠ぺいを認める証拠もないと指摘した。
 
 ただ、実質経営者の妻がその権限を利用して、車両を専属的に利用している事実関係は認められるから、実質経営者は通常支払うべき車両の使用料に相当する経済的な利益を享受しており、その経済的な利益は実質経営者に対する役員給与に当たると判断している。
 
(国税不服審判所、2012.11.01裁決)