タックス・ヘイブン対策税制は日星租税条約に反しないと判示
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/04/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 タックス・ヘイブン対策税制の適用をめぐり、特定外国子会社の未処分所得を内国法人の益金に算入すべきか否かの判定が争われて上告されていた事件に対し、最高裁(金築誠志裁判長)は、タックス・ヘイブン対策税制は内国法人に対する課税権の行使として行われるものである以上、その課税権は日星(シンガポール)租税条約が定める「禁止又は制限」の対象に含まれないと判示して国内親法人の上告を棄却した。

 この事件は、タックス・ヘイブン対策税制を定めた措置法66条の6に基づきシンガポールに設立された特定外国子会社の未処分所得(同子会社が同国で売却・消却した保有株式の譲渡益)を内国法人の所得金額の計算上益金に算入しなかったため、課税当局が益金に算入して更正処分の上、過少申告加算税を賦課決定したことが発端。そこで内国法人が、同条の各規定が日本とシンガポール間で締結されている日星租税条約7条1項の禁止又は制限の対象に含まれると主張、課税処分の取消しを求めて上告していた事案である。

 これに対して最高裁は、措置法66条の6第1項、日星租税条約7条1項の趣旨に触れ、租税条約等によって我が国のタックス・ヘイブン対策税制の機能が制約されるのは、租税条約等にその明文規定があるなど十分な解釈上の根拠がある場合に限られると指摘。その結果、タックス・ヘイブン対策税制による課税が、あくまで我が国の内国法人に対する課税権の行使として行われるものである以上、日星租税条約7条1項が定める禁止又は制限の対象には含まれないことは明らかであると判示、上告を棄却している。

(2009.10.29 最高裁第一小法廷判決、平成20年(行ヒ)第91号)