株式交換時の株式買取請求の対象株式は元々保有の株式
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:05/14/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 旧商法下において、株主交換に反対する株主が株式買取請求権を行使して保有株式を譲渡した場合の譲渡株式が株式交換で割り当てられた完全親会社の株主か、元々保有していた完全子会社の株式かの判断が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、譲渡価額の1株当たりの金額が完全親会社の市場価格と大幅にかけ離れている事実等を指摘した上で元々保有していた株式を譲渡したものであると判示、原告側の主張を認容した。

 この事件は、株式交換契約の際に株式買取請求権を行使した後、譲渡対価の一部が自己株式の取得に伴う配当等に当たると判断して、受取配当金の益金不算入を適用して申告したのが発端。しかし原処分庁が、完全子会社の株式(保有株式)ではなく株式交換で割り当てられた完全親会社の株式であるからみなし配当額は発生しないと判断するとともに、その譲渡損益の計上時期も一事業年度前であると認定して法人税の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて法人側が提訴した事案である。

 原処分庁側は、株式買取請求に伴う経済的な効果は反対株主が保有していた完全子会社株式の買取りと異ならないと指摘した上で、株式交換に反対する株主に投下資本回収手段を確保するために株式買取請求を認めた旧商法の趣旨にも反しないと主張。旧商法では反対株主からの買取請求に関わる明確な規定がなかったために生じた問題でもあるといえる。

 判決は、株式買取価格合意書の事実認定をした上で、市場で高額で売却できるにもかかわらず、敢えて大幅に下回る低価格で譲渡することは経験則上考え難いと指摘。仮に譲渡の対象が株式交換後の株式であれば、株式交換が成立した直近の完全親会社の株式の市場価格を前提に譲渡の交渉が行われていたはずであるものの、その市場価格とは大幅にかけ離れているとも指摘。結局、合意書の内容は株式買取請求に基づく株式交換前の株式の譲渡に関する合意と認めるのが相当と判断して、納税者側の主張を認容した。

(2012.12.04 東京地裁判決、平成22年(行ウ)第510号)。