役員給与の減額に正当に理由がないと判示、控訴審も棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/26/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 役員等に冬季賞与として支払った分が事前確定届出給与に該当するか否かの判断が争われた事件で東京高裁(奥田隆文裁判長)は、業績悪化改定事由等以外の理由で減額する場合、減額せざるを得ない客観的な事情を原処分庁に具体的に説明できる必要があることから損金算入が可能な事前確定届出給与には該当しないと判断して原審の判決内容を支持、法人側の請求を斥けている。

 この事件は、超硬工具の製造・販売業を営む法人が代表取締役等に支給した役員給与のうち冬季賞与分を事前確定届出給与に該当すると判断して申告したところ、原処分庁が変更届出のなかった夏期賞与の減額を理由に事前確定届出給与には該当しないと判断、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしたのが発端。そこで法人側がその取消しを求めて提訴したところ、原審の東京地裁が棄却したため、再度その取消しを求めて控訴したという事案である。

 控訴審で法人側は、支給当時、事前確定届出給与に関する変更届出の理由となる業績悪化改定事由の範囲が明確ではなく、止むを得ない事情の判断も極めて困難だったと主張。その上で、変更届出をしなかったことについて落ち度はなく、夏期賞与の減額支給を理由に冬期給与の額まで損金算入を認めないのは不当であるなどと主張して原処分の取消しを求めた。

 しかし判決は、法人税法34条1項2号の趣旨に触れ、所定の手続きを経ずに減額支給された事前確定給与について損金算入は認められないと解釈。また、業績悪化改定事由についても、国税庁の例示に該当しない場合、役員給与の額を減額せざるを得ないような客観的な事情を原処分庁に明確に説明できるようにしておく必要があると判示する一方で、業績悪化改定事由の範囲は明確であり、国税庁の役員給与の解説の改訂の前後でその判断が異なるものではないとも判示して、控訴を棄却している。

(2013.03.14東京高裁判決、平成24年(行コ)第424号)