海洋掘削の作業の用に供するリグは船舶に該当と判示して棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:04/08/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 海洋掘削の作業の用に供する構造物の貸付けの対価(賃借料)が国内源泉所得となる船舶の貸付けとなるか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(八木一洋裁判長)は、水上に浮揚しての移動及び積載に係る特徴を備えた各リグを船舶とみることは格別不自然とはいい難いと指摘して源泉所得税の納税告知処分は妥当と判示、法人側の請求を棄却した。

 この事件は、石油・天然ガスの探鉱・開発に係る海洋掘削等の事業を営む国内法人が、海外に主たる営業所がある外国法人から海洋掘削の作業の用に供する構造物(いわゆるリグ)の貸付けを受け、賃借料の支払いの際に国内源泉所得として所得税の源泉徴収をしなかったのが発端となった。

 そこで原処分庁が、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がリグの貸付けは船舶の貸付けには該当しないという判断から、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 リグとは、洋上から海底数千メートルに賦存する石油・天然ガスの貯留層まで掘進するための構造物。このリグの貸付けが所得税法161条3号の「船舶」の貸付けに該当するか否かが争点になった事件で、原告側は所得税法上の船舶は統一的に解釈されるべきであり、船舶法が適用される航海に供する船舶や国際運輸に供する船舶に限られるべきであると主張して、原処分の取消しを求めた。

 これに対して判決は、所得税法上の船舶の貸付けの意義を整理した上で、船舶の意義を直ちに明らかにすることができるとはいい難いことから、物の貸付けに関係する各般の事情を社会通念に照らして検討するほかないと指摘。その上で、法人側の主張は法令等の規定に照らすと、いずれも直ちに採用することはできないと悉く斥けた。

 そこで、事実認定の結果、水上に浮揚しての移動及び積載に係る特徴を備えており、船舶とみることが格別不自然であるとは言い難いとも指摘した。結局、リグの貸付けに関する各般の事情を社会通念に照らして検討すれば、海底に固定されて掘削作業に供される時間は移動時間をはるかに上回るという法人側の事情を考慮しても、所得税法161条3号の船舶に該当すると認めるのが相当であると判示して、法人側の請求を棄却している。

(2013.09.06東京地裁判決、平成24年(行ウ)第294号)