最高裁も、組織再編税制を濫用した租税回避と判断、棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:03/15/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 新設分割に伴う分割承継法人の発行済株式全部を分割法人が譲渡する計画を前提にされた分割による組織再編成が法人税の負担を不当に減少させるものであるか否かの判断が争われた事件で最高裁判所(小貫芳信裁判長)は、株式譲渡の計画が前提の分割は組織再編税制を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであると判示、控訴審と同様、法人側の訴えを棄却した。

 この事件は、新設分割によって設立された分割承継法人が非適格分割であり、資産調整勘定の金額が生じたとしてそれぞれ所定の金額を減算、損金算入して申告したのが発端。これに対して原処分庁が、組織再編成に係る行為又は計算否認規定を適用、資産調整勘定の金額は生じなかったものとして、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。

 そこで、分割承継法人側が原処分の取消しを求めて提訴したところ、一審、二審とも法人側の請求を斥けたため、更にその取消しを求めて上告していたという事案である。つまり、組織再編成における法人の行為計算の意義、その該当性が争点になった事案である。

 最高裁はまず、法人税法132条の2の「法人税の負担の不当な減少」とは、組織再編税制に係る規定を租税回避の手段として濫用し、法人税の負担を減少させることであると解釈。その有無は、
1)行為又は計算が通常想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態と乖離した形式を作出するなど不自然なものであるか否か、
2)税負担の減少以外にそうした行為又は計算の合理的な理由となる事業目的等の事由が存在するか否か、
等の事情を考慮した上で、組織再編成を利用して税負担の減少を意図し、組織再編成税制の本来の趣旨や目的から逸脱する態様でその適用を受ける又は免れるものと認められるか否か、という観点から判断するのが相当であるという考えを示した。

 その結果、会社分割、分割後の株式譲渡、譲渡後の合併という一連の組織再編成に係る行為はごく短期間で行われ、税負担の減少以外に事業目的等があったと考え難いことから、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たると解するのが相当と判示して、法人側の上告を棄却した。

(最高裁第二小法廷平成28年2月29日判決、平成27年(行ヒ)第177号)