支払手数料に対する役務提供を受けていなかったと推認、棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:12/27/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 日本法人から海外の個人名義の口座に送金された金員が情報収集等の対価となる支払手数料に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、通常作成されるはずのメモ等も存在せず、請求書に基づかずに送金されていること、また送金された側が収入として税務申告をしていないことなどを理由に、役務提供を受けていなかったと推認して損金算入を否定、法人側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、服飾雑貨等の輸入販売を営む法人が海外在住の外国人名義の口座に送金した金員を損金に算入して確定申告及び修正申告をしたところ、原処分庁が損金算入を否認して重加算税等の更正処分等をしてきた。そこで法人側が、自社ブランドを立ち上げるために、情報収集、取引先の開拓・選定、コンサルティング等々の業務委託に伴う対価として支払ったものであるから損金算入が認められるべきであり、業務委託を仮装したものでもないことから重加算税等の更正処分等は違法と主張して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり、支払手数料等の損金該当性、支払手数料等の支払いの基礎となった役務提供取引が仮装されたものか否かの事実認定が争点になった事案である。

 判決は、事実認定の上、支払手数料の対価といえる役務提供を受けているか否かを検討したところ、支払手数料等が高額に上り、役務内容にも相応のものが含まれていることに照らすと、通常作成されるべき契約書が未作成、役務提供の過程で作成されるべきメモ等も存在せず、請求書に基づかずに支払手数料として送金していると認定。さらに送金された者が自身の収入として税務申告をしていない事情等も認定して、役務提供を受けていなかったと推認した。

 結局、支払手数料等の費途の確認ができず、損金算入は認められないという判断をした。また、役務提供取引の仮装の有無についても、会計帳簿に支払手数料等を業務の遂行上必要と認められる費用として支出したものであるかのように記載して仮装し、その仮装に基づいて申告書を提出しているのであるから、国税通則法68条1項が定める要件に該当すると判示して、法人側の主張を斥けている。

(2016.02.05東京地裁判決、平成26年(行ウ)第279号)