資金繰りが理由の分掌変更に伴う役員退職金の分割払いを否定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/27/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 資金繰りを理由に分割払いした分掌変更に伴う役員退職金の損金算入の可否が争われた事件で国税不服審判所は、分割変更の翌事業年度に支払われたものを役員退職給与と取り扱うことはできないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、役員の分掌変更に伴い退職慰労金の支給を決定した法人が、分掌変更のあった事業年度及びその翌事業年度に分けて支給したことを踏まえ、各事業年度の損金に算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が分掌変更の翌事業年度に支給した金員は退職給与ではなく損金不算入の役員給与に当たると認定、法人税の更正処分等及び源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ってきたため、その全部の取消しを求めたという事案である。

 つまり法人側は、役員の分掌変更に伴う退職慰労金は、資金繰り等の都合から、その一部を分掌変更のあった事業年度と翌事業年度に分割支給したものであり、法基通9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)及び同9-2-28(役員に対する退職給与の損金算入の時期)が適用されるべきであり、分掌変更の翌事業年度に支給された金員も役員退職給与として取り扱われるべきである旨主張したわけだ。

 これに対して裁決は、法基通9-2-32の取扱いの趣旨に触れ、原則、法人が実際に支払ったものに限り適用される取扱いであり、分掌変更時に支給されなかったことに真に合理的な理由がある場合に限って例外的に適用されると解釈。しかし、退職慰労金に関する株主総会議事録や取締役会議事録が存在せず、資金需要を認めるに足りる具体的な資料もなく、一部支払われた後の退職慰労金の残額についての支払時期や支払額を具体的に定めず漠然と3年以内としているだけで、決算の状況を踏まえた支払いがされている事情が伺えた。

 その結果、こうした場合にも損金算入を認めてしまうと恣意的な損金算入を認めることとなり、課税上の弊害があるといわざるを得ないと指摘。結局、分掌変更時に全額が支払われなかったことに合理的な理由があると認めるに足りる証拠もないため、役員退職給与として取り扱うことはできないと判断して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2012.03.27裁決)