当初申告要件を充足していないことを理由に更正の請求を否認
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:02/28/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 確定申告の際に雇用促進税制に係る特例の適用を失念したことを理由に、特別税額控除額を計算し直した上、明細書を添付して更正の請求をした場合でも同特例の適用が認められるか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、中間申告及び確定申告の際に同制度の適用を受ける旨を選択しなかった以上、更正の請求等をすることは許されないと判示して、法人側の訴えを棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、建物等の保守管理等を営む法人が確定申告の際に、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(措法42の12の4)」の適用を失念したのが発端。そこで、同特例が求める明細書を添付して、特別控除を適用して計算し直し、更正の請求をしたところ、原処分庁が確定申告書に特別控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除金額及び控除額の計算に関する明細書の添付がなかったことを理由に、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴した事案である。

 法人側は、同特例を定めた措置法42条の12の4第4項が「……確定申告書等……更正請求書に……明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する」旨規定していることから、明細書を添付した更正請求書が提出された場合にも適用があることは、条文の文言上も明らかと主張して、取消しを求めたわけだ。

 しかし判決は、租税法規は文理解釈が原則であるが、文理解釈で意味内容を明らかにすることが困難な場合に初めて、規定の趣旨・目的等からその意味内容を明らかにする目的論的解釈に拠るべきと指摘。その上で、措置法42条の12の4の4項後段が定める「確定申告書等」が、中間申告書及び確定申告書を指すのは明らかという解釈を示した。

 つまり、同控除制度には当初申告要件が設けられており、納税者が中間申告書及び確定申告書の提出の際に制度の適用を受けることを選択しなかった以上、後日これを覆し、適用を受けることを追加的に選択する趣旨で更正の請求等をすることは許されないという判断だ。

(2016.07.08東京地裁判決、平成27年(行ウ)第604号)