適正な時価の算定には建物の用途の特殊性の考慮も必要
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:08/02/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 リゾート地内にある建物の譲渡価額が時価に相当するか否かの判断が争われた事案で国税不服審判所は、建物の用途に特殊性が認められることを理由に、鑑定評価に基づく審判所認定額が適正な時価であると判断、原処分を全部取り消した。

 この事案は建設業を営む同族法人が所有するリゾート地内の建物を代表者に売却したことがそもそもの発端になったもので、建物の譲渡価額が時価よりも低廉な価額でなされたものか否かが問題になった。つまり、代表者に売却後、同族会社が帳簿価額との差額5000万円余を固定資産の売却損として計上して申告したことに対して、原処分庁が更正、過少申告加算税の賦課決定処分、源泉所得税の納税告知処分さらに不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて争われていたという事案だ。

 原処分庁は時価を算定する際の再取得価額を拠り所に否認してきたが、審査請求人は建物の時価は、土地と分離された建物であることや地理的条件等を勘案した上での一般市場における価額であると反論、原処分の取消しを求めていた。

 これに対して裁決は、建物がリゾート地内にあるため土地付建物に市場価額があり、建物だけでは売買の対象にはならないと指摘。また、争いになった建物の用途が研修所又はモデルハウス等であるという特殊性があるため、建物と敷地が一体となって市場性を有する市場価額から建物評価額を算出するとともに、建物自体の用途等の特殊性を考慮する必要があるとも指摘した上で、審判所が鑑定評価を依頼して求めた価額が適正な時価にあたると判断、結果的に、原処分庁、請求人の主張した価額も斥ける判断を下した。

(国税不服審判所、2004.03.16裁決)