経理部長の隠蔽・仮装行為は法人の行為と同視するのが相当
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/02/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 経理部長が自らの金員の詐取を隠蔽するために架空外注費を計上して申告したことに対してなされた更正処分、重加算税の賦課決定処分の可否が争われた事件で、東京高裁(大坪丘裁判長)は一審判決を取り消し、経理部長が行った隠ぺい・仮装行為は法人の行為と同視するのが相当であると判示、原処分庁側勝訴の逆転判決を言い渡した。

 この事件は、法人の経理部長が詐取した金員を隠蔽するため、架空外注費を損金に計上して申告したことが発端になったもので、これに対して原処分庁が法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人がその取消しを求めて提訴したところ一審の東京地裁が法人側の主張を認める判決を下したことから、国側がその取消しを求めて控訴していた。

 つまり、法人側は架空外注費は計上された事業年度の損金から控除され、詐取された架空外注費相当額は損金に算入されるが、金員を詐取した経理部長に対する損害賠償請求権の額は益金に算入する必要がないと主張し、原処分庁側が詐取した者に対する損害賠償請求権の額は詐取された架空外注費に相当する損害額を損金に算入した事業年度と同じ事業年度の益金に算入すべきであると主張していたという事案だ。

 これに対して控訴審は、損害賠償請求権が全額回収不能であることが客観的に明らかとは言い難いから、貸倒損失として損金計上はできないと判断。また、法人の役員は経理部長の隠蔽・仮装行為を認識することができ、過少申告しないように措置することも十分可能だったことから、経理部長の行為は法人の行為と同視するのが相当と指摘して、重加算税を課したことに違法性はないと判示して原審を取り消している。法人側は上告中。

(2009.02.18 東京高裁判決、平成20年(行コ)第116号)