過年度の会計処理の変更に伴う減額更正の請求を棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:12/10/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 不動産流動化実務指針に従った過年度の会計処理の変更に伴い金融取引処理をめぐる納付税額が過大になったことを理由にした更正の請求が可能か否かの判断が争われた事件で東京地裁(八木一洋裁判長)は、同指針は法人税法の公平な所得計算という要請とは別の観点に立ったものであり、税会計処理基準つまり一般に公正妥当な会計処理基準に該当するとは認め難いことから更正の請求は認められないと判示、法人側の請求を棄却した。
 
 この事件は、家庭用電気製品の売買等を行う上場法人が資金調達の目的から、保有する土地等を信託財産とする信託契約を締結し、総額290億円で譲渡するという不動産の流動化を行ったことを受け、信託財産の譲渡とする旨の会計処理の下に法人税の申告をしたところ、証券取引等監視委員会から信託財産の譲渡を金融取引として取り扱う不動産流動化実務指針に基づく処理をすべきである旨の指導を受け、過年度の会計処理を変更したのが発端。その結果、過年度の納付税額が過大になったため、減額更正の請求をしたものの斥けられたことから提訴して、その取消しを求めたという事案である。
 
 これに対して判決は、不動産流動化実務指針の対象は、特別目的会社を活用した不動産の流動化がされた場合に限り、その不動産又は信託に係る受益権の譲渡人の会計処理に関する取扱いを定めたものと指摘。一方、法人税法は適正な課税及び納税義務の履行を確保することを目的に、基本的に収入の原因となった法律関係に従い、各事業年度の収益として実現した金額を益金算入することによって所得金額を計算するものであると解釈した。

 しかし、信託受益権が契約に基づいて法的に譲渡され、その対価を得ているにもかかわらず、信託受益権の譲渡と認識せず、専ら譲渡人に収益の実現がなかったものとする不動産流動化実務指針は、法人税法が求める公平な所得計算という要請とは別の観点に立って定められたものであるから税会計処理基準に該当するものとは解し難いと判示して、棄却した。

(東京地裁平成25年2月25日判決、平成24年(行ウ)第26号)