分掌変更は職務内容の変更に当たると認定、納税者勝訴
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:09/08/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 取締役から監査役への分掌変更に伴う役員退職金の損金算入の可否が争われた事件で長崎地裁(須田啓之裁判長)は、分掌変更の内容が地位及び職務内容の変更に当たると認定、同族会社側の主張を全面的に認容する判決を言い渡した。

 この事件は、紙器製造販売等を営む同族会社が提訴していたもので、20数年の間、取締役に就任してきた代表者の妻が退任し、監査役に就任したことに伴って役員退職金の支給を決議、その退職金を損金に算入して申告したことが発端になったもの。これに対して原処分庁が実質的に退職したと同様の事情に当たるとは認められないと認定、役員退職金の損金算入を否認した上で法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴していたという事案だ。

 これに対して判決はまず、取締役と監査役は委任関係にあるものの職務内容は異なることから、取締役を退任して監査役に就任することは原則、地位及び職務内容の激変になると指摘。また、職務内容についても、代表者の妻は別法人を創業して経営する計画にあり、取締役としての職務を行う時間的かつ肉体的余裕もないと認定、同族法人側の主張を認容した。

 さらに、いわゆる分掌変更通達にも触れ、同通達に示された内容はあくまで例示であると指摘した上で、代表者の妻が実質的な退職と同様の事情にあると認定、原処分庁側の主張を悉く斥ける内容の判決を言い渡している。事件は国側が控訴を諦めたことで、一審で確定している。

(2009.03.10 長崎地裁判決、平成19年(行ウ)第12号)