創業者としての功績を考慮すれば最終報酬月額は妥当と判断
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:09/29/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 平成18年改正前の役員報酬及び最終報酬月額に基づく死亡退職金が不相当に高額か否かが争われた事件で大分地裁(金光健二裁判長)は、役員報酬については創業者としての功績を重視して不相当に高額とはいえないと認定したものの、退職金については功績倍率3.5を超える部分は不相当に高額と認定、更正処分の一部を取り消す判決を言い渡した。

 この事件は、一般貨物自動車運送業及び不動産賃貸業を営む同族会社の代表者(創業者)の死亡に伴い、死亡保険金を原資に最終報酬月額に功績倍率3.5に基づく退職金と慰労金等を支給して、その支給額を損金に算入して申告したところ、原処分庁が役員報酬・役員退職金を不相当に高額と認定、法人税の更正処分等をしてきたため、同族法人側がその一部取消しを求めて提訴した事案だ。

 つまり原処分庁は、役員の死亡直前に報酬額を過去に支払っていた金額に引き上げたことに注目、入退院を繰り返していた代表者の役員報酬の増額には合理的な理由がないという認定から、否認してきたわけだ。

 これに対して判決は、役員報酬の増額については比較法人よりも業績が良いこと、職務復帰の可能性のないことが不明だったこと、さらに創業者としての功績を踏まえれば、比準報酬月額から僅か1割程度高いだけであり、不相当に高額ではないと判断。一方、死亡退職金については、平均功績倍率に基づく算出には合理性があると指摘した。

 しかし、比較法人の業績と比較した原告法人の業績、創業者としての功績を考慮しても、審判所が原告法人の採用した功績倍率3.5を近似値として相当していることを踏まえ、同功績倍率を超える部分は不相当に高額と判断、更正処分等の一部を取り消す判決を言い渡している。

(2009.02.26 大分地裁判決、平成18年(行ウ)第8号)