支払債務の確定等の事実認定から役員給与の支払事実を認定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/30/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 損金に算入して申告された役員給与の支払事実の有無の判断が争われた事件で、国税不服審判所は各役員への給与に係る支払債務が確定し、支給事務も行われているなどの事実関係を踏まえて架空のものとは認められないと判断、原処分を全部取り消している。

 この事件は、生コンクリートの製造及び販売等を営む同族会社である審査請求人が、役員(3人)に対して支給した役員給与を損金に算入して申告したことに対して、原処分庁が役員給与を受け取っていない旨の一部の役員の申述等から、役員給与は実際に支給されておらず、架空に計上されたものであると認定、法人税の青色申告の承認の取消処分及び更正処分等を行ってきたため、請求人側が役員給与は架空に計上したものではないと主張した上で、各処分に係る各通知書には具体的な事実及び判断に至る過程の記載がなく、また理由の付記にも不備があるとも主張して、原処分の全部取消しを求めたという事案である。

 これに対して裁決は、各役員にはいずれも役員としての勤務実態があると認定するとともに、各役員の役員給与の金額は取締役会等において承認され、支給時期等も従業員と同様に、毎月10日払いとされている事実関係を認定。これらの事実関係から、各事業年度において各役員給与の合計額を総勘定元帳の「役員報酬」勘定に計上したのであるから、毎月10日の時点で役員給与の支払債務は実際に確定していたとみるのが相当であると判断するとともに、架空のものとは認められないと判断、原処分を全部取り消している。原処分庁側の理由附記の不備を指摘した審査請求事案として、新しい税務調査手続きの流れを踏まえた裁決例ともいえる。

(国税不服審判所、2012.03.28裁決)