特定外国子会社の損金の内国法人への算入にNOと最高裁が判断
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/16/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 海外の子会社に生じた欠損金額も親法人の内国法人に帰属するか否かの判定が争われてきた事件で、最高裁(古田佑紀裁判長)は、海外子会社は内国法人とは別法人として独自の活動を行っているのであるから、措置法66条の6を益金の算入を認めているからといって、内国法人に欠損が帰属すると認められないのは明らかと判示、上告を棄却した。

 この事件は、海運業を営む内国法人がパナマに設立した子会社(特定外国子会社)の欠損も親会社の内国法人に帰属するという判断に基づいて損金に算入して申告したところ、原処分庁が租税特別措置法66条の6の定めるところではないと判断、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その可否判断が争われていた事案だ。

 最高裁は、いわゆるタックスヘイブン税制を定めた措置法66条の6は海外の子会社等を利用して租税負担がないか、また極端に低い地域に子会社を設立して所得を留保する等の内国法人の租税回避を考慮した制度で、特定外国子会社が留保金額を有する場合は、その一定の金額を内国法人の益金の額に算入することを規定したものと解釈。他方、特定外国子会社の欠損金額は法人税法22条3項からも内国法人の損金に算入されないことは明らかとも解釈。さらに、特定外国子会社が内国法人とは別法人として独自の活動、つまり船舶の所有、造船契約の締結、船員の雇用等々を行っていたことも明らかであり、内国法人に損益が帰属すると認める事情がないことは明らかとも認定した。結局、措置法66条の6が特定外国子会社の益金を内国法人に算入される関係を定めているからといって、欠損金額までを損金に算入するとまでは認めたものではないという解釈だ。

(最高裁平成19年9月28日第二小法廷判決、平成17年(行ヒ)第89号)