エントランス回線利用権は少額減価償却資産と最高裁も認定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/21/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 PHS事業社が保有するエントランス回線利用権が少額減価償却資産に当たるか否かの判定が争われていた事件の上告審で、最高裁(藤田宙晴裁判長)は1回線に係る権利それぞれ一つの取得価額が10万円未満の少額減価償却資産に当たると認定して納税者側に軍配をあげた。結局、1、2審も含めて国側敗訴のまま事件は確定したことになる。

 この事件は、簡易型携帯電話事業の営業譲渡を受けてPHS事業を開始した法人が取得したエントランス回線利用権の全部を10万円未満の少額減価償却資産として処理して申告したのが発端。申告後、原処分庁の指導にそって対応した後、少額減価償却資産として申告した上で更正の請求をしたところ、無形固定資産であって少額減価償却資産には該当しないとして原処分庁が更正処分を打ってきたため、その取消しを求めて提訴したところ、1・2審とも法人側の主張を受け入れ国側の主張を斥けてきたことから、国側が上告して課税処分の妥当性を主張してきたという事案だ。

 しかし最高裁も、事実関係を整理した上で、エントランス回線利用権はエントランス回線1回線に係る権利一つを1単位として取引されていることが認められると指摘。その上で、エントランス回線利用権の権利は1回線に係る権利の一つであっても、PHS事業の機能を発揮することができ、収益の獲得にも寄与することができるとも判示。結局、裁判官全員一致で、エントランス回線利用権1回線に係る権利一つが、一つの減価償却資産とみるのが相当と判断して、国側の上告を棄却している。

(2008.09.16 最高裁第三小法廷判決、平成18年(行ヒ)第234号)