原審判決を取り消し、海外投資特別損の計上を寄附金と認定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/17/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 海外の子会社が損失補填にあてるために内国法人が送金した損失補填金が寄附金に該当するか否かその判定が争われた事件で、東京高裁(西田美昭裁判長)は子会社等を整理する場合の法基通9-4-1の適用要件を満たしていないと判示して、納税者側の主張を認容した原審(平成9年(行ウ)第239号)を全面的に取り消す国側勝訴の逆転判決を下した。

 この事件は貿易・機械製造業を営む内国法人が、北欧諸国で製品の販売等を行う海外子会社の経営危機を回避するために損失負担金として送金した25億円余を特別損失金として処理して確定申告したことに対して、原処分庁が計画的に取引を仮装した寄附金であると認定して青色申告承認取消処分を行う一方で、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、内国法人側が提訴して取消しを求めたことが発端となった。

 これに対して原審は、国側が法人税法127条1項3号に該当する具体的事実を主張していないから、原処分はいずれも違法であると判断して内国法人の請求を認容したため、国側が控訴していたという事案だ。

 控訴審は事実関係を精査した上で、内国法人は正当な事業目的がなく多額の損失を負担し、後日、損金処理することで税務上控除を受けることを意図して損失負担金を支出したものであると認定。したがって、法基通9-4-1の要件を満たしておらず、より大きな損失を回避するためにやむを得ずなされたものとも認められず、内国法人が負担すべきものでないことは明らかであり、寄附金であるから損金としては扱えないと判断して内国法人側の主張を斥けた。また青色申告承認取消についても、損失負担金が寄附金に該当することを認識しながら敢えて別科目の特別損失に記載して損金処理しようとしたものであり仮装があると認定、取消処分には理由があると判示して原審を取り消す判決を下した。

(2006.01.24東京高裁判決、平成16年(行コ)第122号)