少額減価償却資産の判定に多数取得等の事情の考慮は不要
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/20/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 携帯・自動車電話事業等を営む法人が、PHS事業の営業譲渡に伴って電気通信設備の相互接続協定上の地位を引き継いだ際に支払った端末回線の施設利用権(回線費用)が少額減価償却資産に該当するか資本的支出に該当するかの判定が争われた事件で、東京高裁(太田幸夫裁判長)は原審と同様、減価償却資産に該当し、その取得価額は1回線当たりの価額で判定すべきであると判示、国側の主張を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、携帯電話等のPHS事業を営む法人がPHS接続装置・無線接続装置との間に設置される端末回線(エントランス回線)の施設利用権が電気通信施設利用権として減価償却資産に該当するか、かつその取得価額は1回線当たりで判定すべきか否か争われてきたもので、原審の東京地裁が少額減価償却資産に該当し、全額の損金算入が認められると判断したことから、国側が控訴して原審の取消しを求めていたもの。

 つまり国側は減価償却資産であることは認めるものの、一単位の減価償却資産と判断すべきものであり、購入価額の全額が取得価額となる結果、資本的支出に該当することから損金の額には算入できないと主張して、原審の取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して控訴審は、PHS事業者は接続協定上の地位という一つの資産を譲り受けたものであり、設置負担金を権利金的なものであると解釈することはできないと指摘。その上で、少額減価償却資産に該当するか否かの判断の際には、業務の性質上基本的に重要である、事業の開始や拡張のため取得したものである、多数まとめて取得したものであるといった事情は敢えて考慮すべき事項ではないと判示して、国側の主張を斥けている。

(2006.04.20 東京高裁判決、平成17年(行コ)第160号)