元常務の架空取引行為を法人の行為と同視、重加算税は妥当と判示
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/12/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 法人税・消費税等の申告に対する更正処分・重加算税の賦課決定処分をめぐって、更正処分の期間制限つまり除斥期間を超えたものか、また重加算税の課税要件を満たしているか否かの判断が争われた事件で広島地裁(森崎英二裁判長)は、元取締役が行った架空の外注費計上等の行為は法人の行為と同視できることから、更正処分は適法に行われ、重加算税の課税要件も満たしていると判断、法人側の訴えを棄却した。

 この事件は、建物の総合管理、マンション管理業務等を営む法人の法人税・消費税等の申告に対して、原処分庁が元常務の横領行為であったとしても法人の行為と同視できると認定して重加算税等の賦課決定処分をしてきたため、法人がその取消しを求めて提訴したというもの。

 法人側は、元常務が行った架空外注費等の仮装行為は外注費を環流してもらって私的に流用するための横領目的で、支店長という地位と権限を濫用して実行されたものであるから、法人は全く関与しておらず、法人の仮装行為と同視することはできないと主張して、原処分の取消しを求めた。
 
 一方、原処分庁は元常務が私的に架空外注費の計上等の不正を行ったとしても、元常務が法人の業務において重要な地位を占めていたこと、さらに法人側は適切な申告を実現するために監督業務を尽くしたとは言えないことを理由に、元常務の仮装行為は法人の仮装行為と同視できると主張して請求の棄却を求めた。

 これに対して判決はまず、元常務が国税の課税標準又は税額等の基礎となる事実の一部を仮装したと認定。その上で、事後承認であったとしてもその一部は代表取締役の指示に基づくものであることも認められるから、元常務が行った仮装行為は法人の行為と同視できると評価した。さらに、偽りその他不正の行為をした者が納税者と一定の関係にある者であれば除斥期間は7年になるのが適当と判示、法人側の主張を悉く斥けている。

(2013.03.27 広島地裁判決、平成22年(行ウ)第30号)