私的な債務免除と認定、繰越欠損金の損金算入を否認
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:05/25/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 役員等からの債権放棄による債務免除が法人税法施行令117条4号に定める「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に該当するか否かの判断が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は、債務免除が単に会社と役員らとの間における私的な協議によって決定されたものであるから、繰越欠損金の損金算入は認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、審査請求人(法人)が、役員等からの債権放棄に伴って債務免除を受けたことから、債務免除額を益金に算入した上で、会社更生法等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入(法法59)に基づく欠損金額を損金に算入して申告したところ、原処分庁が債権放棄に伴う債務免除は再生手続開始の決定に準ずる事実等には当たらないと否認、法人税の更正処分等をしてきたため、その取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決は、法人税法施行令117条1号から3号の各事実はいずれも法律がその手続きを定め、すべての債権者に公正な弁済が行われるように裁判所が関与して行われるものであると指摘して、同条4号の「前3号に準じる事実」とは債務超過に陥った債務者が、その手続きに応じて、すべての債権者に公正な弁済を行うことが保障されているものに限られると解釈した。

 その上で、請求人は債権者集会で協議を行うなど法律が求める一連の手続等を行っておらず、債務超過状態にあるものの事業経営が成り立たなくなるほどの経営危機に陥っている状態ではなかった事実等を認定。結局、多数の債権者との協議によって決められた債務免除ではなく、単に請求人と役員らとの間における私的な協議によって決められたものであることから、法人税法施行令117条4号に規定する事実には当たらないと指摘するとともに、原処分は適法であると判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2009.06.24裁決)