子会社に対する売掛債権の放棄は法人税法上の寄附金に該当
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:03/07/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 外国の子会社に対する売掛債権の放棄が寄附金に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、売掛債権の放棄は有効に放棄したものとは認められるものの、売掛債権の放棄に伴う損失は法人税法上の寄附金に該当すると判断、原処分を一部取り消す裁決を言い渡した。

 この事件は、審査請求人である内国法人が、外国の子会社に対する売掛債権を放棄したことを理由に売掛債権相当額を貸倒損失として損金に算入して申告したのが発端。これに対して原処分庁が、売掛債権の放棄は仮装されたものであると認定の上、売掛債権相当額の損金算入を否認、法人税の更正処分等を行ってきたことから、法人側が、原処分庁の認定に誤りがあると反論して、原処分等の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり、原処分庁側は、債権放棄に関する請求人と子会社との間の意思について、回収不能額が不確定な状態の下、子会社に対する売掛債権の全額を放棄する旨の内容虚偽の債権放棄声明文を作成し、交付することで子会社の清算を進めることを企図し、その交付後に子会社の返済不足額として確定した回収不能額を債権放棄する趣旨であることが明らかであるなどと指摘した上で、声明文の交付だけをもって請求人側が売掛債権を放棄したとは認められない旨主張、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 これに対して裁決は、売掛債権の放棄に至る経緯等からすれば、請求人が子会社を破産させることなく清算する必要性から売掛債権の全額を放棄したと認めるのが自然であり、売掛債権の放棄は、請求人の真意に基づくものといえることから、声明文の交付をもって、売掛債権を有効に放棄したものと認定した。

 しかし、請求人が子会社の清算に伴う損失負担を行う理由は認められないことから売掛債権の放棄に経済的合理性があるとはいえず、子会社の債務超過が相当期間継続した事実もないことを理由に、売掛債権の放棄に係る損失は法人税法上の寄附金に該当すると判断、結果的に一部取消しという裁決結果になった。

(2016.04.14国税不服審判所裁決)