取得株式の譲受差額は受贈益、譲渡差額相当額は収益と判示して棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:05/17/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 吸収合併によって消滅した法人が取得した株式の譲受差額に相当する額が受贈益となるか、また株式の譲渡に伴う譲渡差額に相当する額が収益かつ寄附金に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、法人側の主張をもって特段の事情があるとはいえず、譲受価額相当額が受贈益として益金に算入されると判示する一方、譲渡差額相当額は収益として益金算入され、かつ寄附金に該当すると判示して、法人側の主張を棄却した。

 この事件は、吸収合併によって消滅した法人の確定申告に対して、原処分庁が更正処分をしてきたため、合併法人が確定申告に係る所得金額を超える部分、納付すべき法人税額を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額を下回る部分に対する更正処分を違法と主張、その取消しを求めて提訴したもの。つまり、消滅法人側は、有価証券売却損の売却代金と譲渡株式の取得原価との差額を計上し、損金の額に算入して申告したわけだ。

 そこで原処分庁側は、取得株式、譲渡株式の価額には具体的な根拠がなく、市場価格より低額で取得又は譲渡されたものであるから、取得株式の譲受価額と市場価額との差額は受贈益として益金算入され、また譲渡株式の譲渡価額と市場価格との差額は収益として益金算入、かつ寄附金に該当し、損金不算入額の限度額を超える部分の損金算入は認められないと反論して、棄却を求めたという事案である。

 これに対して判決はまず、法人側が主張するリーマンショック等による数十年に一度の大きな株価下落の局面等の事情をみても、取得株式の適正な価額に影響を与え得るものを何ら見いだすことはできないから、取得株式の譲受価額との差額である譲受差額に相当する額は受贈益として益金算入されると指摘した。

 一方、譲渡株式の譲渡日における終値をもって適正な価額の基礎とすべきことに影響を与える事情ということはできないと指摘。その上で、法人側が主張する事情をもって特段の事情があったとはいえないと指摘してその主張を悉く斥け、結局、譲渡差額が収益として益金算入され、かつ同額が寄附金に該当すると判示して、棄却した。