分割払いの分掌変更退職金の支給方法に課税上の弊害を指摘
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/02/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 役員の分掌変更が行われた翌事業年度に分割払いされた金員が役員退職金に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、支給時期や分割払いの理由等の支給実態から退職給与とは認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、役員の分掌変更に伴い退職慰労金の支給を審査請求人(法人)が決定して、分掌変更のあった事業年度、翌事業年度に分割して支給したことを踏まえ、各事業年度の損金に算入して申告したところ、原処分庁が翌事業年度に支給した金員は損金に算入されない役員給与に当たると判断、法人税の更正処分等及び源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ってきたのが発端。

 そこで、法人側がその全部取消しを求めて審査請求したわけだ。つまり、資金繰り等の都合から事業年度を分けて支給したものであるから、役員退職金の損金算入を認める法人税基本通達(9-2-32、9-2-28)の取扱いが適用されるべきであると主張して、原処分の取消しを求めたという事案である。

 しかし裁決は、役員退職金の恣意的な損金算入等の弊害を防止する必要性から、原則、法人が実際に支払ったものに限って適用されるべきであり、分掌変更等の際に支給されなかったことが真に合理的な理由によるものである時に限って、例外的に適用されるものであると同通達の趣旨を説明。しかし、退職慰労金に関する株主総会議事録や取締役会議事録が存在せず、資金重要を認めるに足りる具体的な資料もないと指摘。

 しかも、一部支払後の残額の支払時期や支払額を具体的に定めず、漫然と3年以内とされているだけで、決算の状況を踏まえて支払いがされていることが窺えることからすると、損金算入を認めた場合には恣意的な損金算入を認める結果となり、課税上の弊害があると言わざるを得ないと指摘して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2012.03.27裁決)