高裁もロイヤルティの対価性を認定、原処分庁は上告を断念
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:04/11/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 建築ノウハウの使用許諾料として海外の関連会社に支払ったロイヤルティの対価性の有無と寄付金の該当性が争われた事件で、東京高裁(江見弘武裁判長)はロイヤルティには対価性があると原審と同様に判断、原処分を全面的に取り消す判決を下した。敗訴した原処分庁側が上告を断念したため、納税者勝訴のまま事件は確定した。

 この事件は、良質の建築手法で知られる木造住宅の注文建築業を営む法人(一条工務店)が、建築ノウハウの使用許諾のために国外の関連会社に支払ったロイヤルティの対価性の有無、対価性がないとした場合の寄付金の該当性が争われていたもので、原処分庁が建築ノウハウ使用のためのロイヤルティの支払いは仮装取引によるもので対価性がないことから寄付金に当たると認定して、過少申告加算税、重加算税の賦課決定処分をしてきたことが発端になっていた事案だ。

 同時に、一条工務店とフランチャイズ契約を交わしていた国内の各社が海外の関連会社と交わした契約に基づくノウハウ、商標等の使用料として一条工務店に支払ったロイヤルティも仮装取引によるもので、本来、一条工務店側が売上げに計上すべきであるとも認定。こうした認定をしたのも、海外の関連会社の設立の目的が一条工務店の負担すべき法人税や同工務店の創業者の相続税等の回避が目的になっていたという原処分庁側の判断が働いていたからのようだ。

 しかし控訴審も、海外の関連会社が一条工務店の東南アジアにおける生産拠点の管理をしていたことや、木造注文住宅の販売や施工に関するノウハウ等を提供していた事実等々を認定。その結果、ロイヤルティの対価性がないとまでは認められないと判断して、原処分庁の主張をことごとく斥けている。

(2006.03.15東京高裁判決、平成17年(行コ)第218号)