資産状態の著しい悪化ないと子会社株式の評価損計上を否認
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:04/26/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 資産状態の著しい悪化を理由にした子会社株式の増資払込後の評価損の計上を巡り、子会社株式の価値が著しく低下した事実が認められるか否かが争われた事件で、国税不服審判所は子会社に資産状態の著しい悪化は認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、プレハブ住宅の施工・販売業を営む審査請求人が、子会社の資産状態の悪化を理由に所有する子会社株式の評価損を計上して申告したところ、原処分庁が子会社の資産状態が著しく悪化している事実は認められないと申告内容を否認、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求していたもの。請求人側は増資後1年を経過した時点の判断でも翌期の業績回復が見込めないのが確実であること、前期の1株当たりの純資産価額と比べても今期はおおむね50%の下落があることから、評価損の計上は認められるべきであると主張していた。

 これに対して裁決は、請求人が増資によって取得した時点の子会社株式の1株当たりの純資産価額つまり株式取得時の1株当たりの純資産価額に比べ、事業年度終了時の1株当たりの純資産価額がおおむね50%以上下回る状態にはなく、有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したといえる事実も認められないと認定。結局、子会社株式の価額が著しく低下したことについて判断するまでもなく、法人所得の金額の計算上、株式評価損は損金の額に算入することは認められないと判断して審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2010.05.24裁決)