老人ホーム入居一時金の返済保証金相当額の負債勘定処理を否認
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:01/18/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 有料老人ホームの入居一時金のうちの返済保証金相当額が益金を構成するか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(岩井伸晃裁判長)は返済保証期間の経過後は益金の範囲に含まれると判断するとともに、増額収益部分に含まれる仮受消費税相当額も益金の範囲に含まれると解釈、有料老人ホーム側の主張を全面的に斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、終身入居金及び介護費用からなる入居一時金のうち返済保証金相当額は益金にならないと有料老人ホーム側が解釈、負債勘定として益金には算入せずに申告したことが発端になったもの。

 というのも、入居者が返済保証期間内に退去し又は死亡した場合、中途終了返済条項に基づき、終身入居金又は介護費用の一部の額が返金されることから、その一部を返済保証金勘定にプールし、その返済金の原資にするという制度設計を採っていたのであるから、その勘定は負債勘定に相当するという解釈からだった。しかし、原処分庁がこの税務処理を否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、有料老人ホーム側がその取消しを求めて提訴していたという事案だ。

 これに対して判決は、個々の入居者から返済保証金相当額を預かり、返済保証期間内に解約する入居者が発生した場合に、その預かり金全体から返済保証金相当額の支出事務を代行するなどといった内容の定めにはなっていないと指摘。また、中途終了返済条項の定めによれば、少なくとも返済保証期間経過後は個々の入居者に対して返済保証金勘定に対応した債務を負っているわけでもないため、返済保証期間経過後もそれを負債として処理することは許されず、その勘定部分も含め益金として計上すべきであると判断して棄却した。これに連動して、増額収益部分に含まれる仮受消費税相当額も益金の範囲に含まれると解釈して、有料老人ホーム側の主張を全面的に斥けている。

(2010.04.28 東京地裁判決、平成19年(行ウ)第626号)