いわゆる社長付でもその他の従業員に当たると最高裁が自ら職権で判断
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:02/15/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 法人税の脱税事件をめぐり、不正経理に加担したとされたいわゆる社長付の者が、脱税に伴う罰則の対象となる「その他従業者」に該当するか否かの判断が争われた事件で、最高裁(横田尤孝裁判長)は実質的に経理担当の取締役に相当する権限を与えられ、決算等の業務を統括していたのであるからその他従業者に当たると認定、上告を棄却した。実質、事実認定の事件だが、最高裁自ら職権で判決を言い渡すという珍しい判決になった。

 この事件は車の設計や製作、販売等を営む株式会社の代表取締役が、社長付として決算業務や法人税の申告業務等を統括していた者と経理部社員らと共謀の上、架空の直接材料費の計上等によって所得を秘匿して虚偽の法人税の申告書を提出、3期で10億円余の法人税を免れ、罰則を課されたことが発端になったもの。

 そこで、いわゆる社長付だった者が、会社から報酬を受けることも、会社に日常的に出社することもなかったことを理由に、法人税を不正に免れた場合に罰則の対象となる「その他従業者」には当たらない旨、さらに不正経理の指示も「業務に関して」行われたものとはいえないと主張、罰則規定の適用の取消しを求めて上告していたという事案だ。

 しかし最高裁も原審を支持、社長付からの指示は法人税ほ脱に関わるもので、決算・確定申告の業務等を統括する過程で会社の「業務に関して」行われたものと認定。さらに、社長付が秘匿した所得を自ら領得する意図を有していたとしても、そうした行為者の意図は業務に関する要件には何ら影響を及ぼすものではないと解釈して棄却した。事実認定事案だったものの、最高裁が職権で自ら判決を言い渡すという珍しい決着となったが、脱税等が認定された場合の「その他従業者」の解釈をめぐる判断を示す判決例ともなった。

(最高裁第二小法廷、平成23年1月21日判決、平成19年(あ)第2014号)